こんにちは、なごや社会福祉士事務所の行成です。
元気回復行動(WRAP)プランを作ろう、第4弾です。
今回は危機的状況(クライシス)のプラン作りについて解説していきます。
第一回目:元気回復行動プランを作ろう①導入編
第二回目:元気回復行動プランを作ろう②日常生活管理プラン
第三回目:元気回復行動プランを作ろう③調子を崩しかけているときのプラン
危機的状況(クライシス)とは
自分で判断したり、自分で自分をケアしたり、身の安全を保ったりすることが、もはや出来なくなってしまう。これが危機的状況です。
例えばうつ病の人が自殺を考え、行動にうつそうとするときは、病気に思考が支配されていて、自分の判断力を信用するのは危険です。
そのため、クライシスプランを作るときは、自分が元気で調子のいいときが適しており、クライシスプランを実行するのは、あなたのことをよく知る支援者や家族になります。
クライシスプラン
バインダーやノートを使うか、クライシスプランを活用してみましょう。
調子が悪くなっているきざしにいち早く気づき、対処することでクライシスに陥る可能性を減らすことはできますが、その時のために備えておくことは必要です。
なぜなら、最善のプラン作りと自分のための積極的な行動をとっていても、完全にコントロールを失ってしまうことは起こりうるからです。
元気な時にクライシスプランを作っておくことで、家族や支援者があなたにとって何をすれば役に立つのかを探る時間を削ることができます。そして、より早く回復に向かうことができるようになることにもつながります。
普段の自分と比べてどうなるのか、書き出してみましょう
クライシスプランは自分の判断を信頼できないために、他の人に自分を託すプランなので、周囲の人に「これは普段と違う」と判断できる材料をまず提供します。
例えば…
「自分は存在するべきではない」と考え、自殺を考える、自傷行為をする
ずっと泣き出しそうな顔をしている、泣きわめく、会話が成り立たないことがある
包丁やカッターを身近に置くようになる、自分を傷つけようとする
次に、更に踏み入って、こうなってしまったらもう自分の意思決定は信用できないと言えるような状態も書き出していきます。
家族や支援者がクライシスプランを使うかどうかの目安とするためです。
できるだけ客観的に見て判断できるような内容を書いていきましょう。
例えば…
強い不安、「死ぬ」ことをほのめかす、今の状態がずっと続くと考える
自分が死んだ後のことを考え、生命保険の内容などを確認する
人の話を集中して聞けない、うつむいている、スマホで「死にたい」と検索している
支援者や家族などに「今自分は危機的状況だ」と伝えるためにも、これらのサインを注目する必要があります。
自分の代わりにコントロールしてくれる人やものはなんですか?
自分の意思決定が信頼できない以上は、自分の代わりに自分を保護してくれる人に、危機的状況であることを伝えて、判断や行動をゆだねる必要が出てきます。
- 誰に助けてほしいか(名前、関係、連絡先など)
- 逆に関わりたくない人は誰か
- どのようなサポートをしてほしいか
これらを書き出していきます。
例えば、
- 「主治医」に「頓服を処方」してほしい
- 「家族」に「一緒に受診」をしてほしい
- 「家族」に「家事」をしてほしい
- 「主治医」に「入院するための紹介状」を書いてほしい
など。
状況を悪化させる可能性のあるものごとはなんですか?
危機的状況に陥ったら、回復をめざすのが妥当ですが、もし状況を悪化させる要素があるとしたら、それは排除しておかなければなりません。そのため、状況を悪化させる可能性のあるものごとについても書き出していきます。
例えば…
家族や親族の症状への無理解、無関心
会社からの電話やメール
支援者はこれを見て、状況を悪化させる可能性のあるものごとからあなたを保護し、サポートします。
サポートの結果、回復のきざしが見えてきたら、「もう自分で判断できる」危機的状況を脱したと言えるサインを参考にして、支援を終了します。
例えば…
笑顔がみられるようになった、起きている時間が長くなった、泣くことがなくなった
会話が成り立つようになった、表情がある、未来のことについて話をする
悲観的な考え方ではなくなった、夜しっかり眠れるようになった
音楽を聞くようになった
ここまでクライシスプランを書き上げたら、コピーして「いざというとき支援してもらいたい人」に渡します。
自分が危機的状況におちいった時に「どうなるのか」「誰に頼りたいのか」「何をしてほしいのか」をまとめるのが、クライシスプランを作る中で大切になります。
次回は「危機的状況を脱した後のプラン」について解説していきます。