こんにちは、なごや社会福祉士事務所の行成です。
本日は子ども虐待防止策講演会に参加させていただきました。
私が「日本一醜い親への手紙」をはじめ、「完全家出マニュアル」をきっかけに実家を出たことや、最近ではソーシャルデザインの教科書的な本である「よのなかを変える技術」で起業を決意するなど、私の人生を前向きに揺るがしてくれたのが今回の講師である今一生さんです。
長年児童虐待の当事者から声を聞き続けた今さんが名古屋まで来てくださるということで、迷わず参加いたしました。
児童虐待分野の当事者研究という面では間違いなく第一人者だと思っています。
そんな今さんの講演会ですから、リアルな児童虐待の声や実情と厚労省が発表している数値、そしてこれから児童虐待が起きないようにするためにはどういった政策が必要なのかという提案まで、幅広い内容を凝縮した3時間でした。
厚労省が定義している「児童虐待」とは
問題に対処するには何事も定義づけが必要です。
厚生労働省は児童虐待を以下の四体系で定義しています。
- 身体的虐待
- 心理的虐待
- ネグレクト
- 性的虐待
統計では、身体的虐待と心理的虐待、そしてネグレクトがそれぞれおよそ3割、性的虐待は2.2%となっています。
ただ、今さんに寄せられる虐待体験談や相談の3割が性的虐待であり、その特徴は虐待を受けているその時には子どもは虐待だと認識できないという問題があります。
思春期になれば性教育もはじまり、自分が何をされているのかを理解できるようになる、と同時に恥ずかしくて相談ができなくなってしまう。
もしくは、大人になってはじめて自分が虐待を受けていたことを認識する。
そのため、性的虐待は、虐待を受けているその時に子ども自身が虐待を受けていることを訴えられないわけです。
ただし、これは性的虐待にとどまらず、他の3虐待でもみられる問題です。
なぜそういった事が起こるのか、それは学校で「子ども虐待とは何か、子どもの人権とは何か」が教えられていないため、子どもは自分の家で起きていることが虐待だと認識できないからです。
経済的虐待と文化的虐待
更に、今さんは厚生労働省が示す四虐待以外にも「経済的虐待」や「文化的虐待」があるとお話しされました。
経済的虐待は高齢者福祉に携わったことのある人ならご存じかと思いますが、子どもの場合親には「親権」という強力な権利があり、その中に「資産を管理する権利」があるために、子どもがおこづかいを貯めて買ったゲーム機を親が壊したり捨てたとしても「子どもの資産を管理している」という大義名分があるために厚生労働省は虐待として扱わないのです。
子どもが独立するためにアルバイトをして稼いだお金も、「資産管理」の名のもとに親が遊行費として使いこんだり、生活費として消費してしまうなどの経済的虐待も存在します。
日本では親権が非常に強いために、国は虐待の定義の中に含めていませんが、何が虐待なのかを決めるのは虐待を受けた当事者です。
おこづかいを貯めて買ったゲームが壊されたら、子どもはどう感じるでしょうか。
頑張ってアルバイトをしたのに1円も手元に残してもらえなかったら。
子どもは自立心を折られ、親の行動の恐怖に支配されるしかありません。
文化的虐待ですが、これは親が極端な思想の持主であったり、宗教にのめりこんでいる場合などに、子どもを他の考えに染まらせないよう交友関係を制限したり洗脳したりすることです。
親からの支配を受けることで、健全な交友関係を築くことができず、学校と家との板挟みに遭ってつらい思いをします。
なぜ虐待が起こるのか
虐待により亡くなっている子のほぼ半数が0歳児、およそ2割は生まれたその日に亡くなっています。
子どもを育てられる環境が整わない中での出産がいたましい事件を生み出していることがよくわかります。
では、無事に1歳を迎えることができた子どもたちはなぜ虐待されてしまうのでしょうか。
それは親は子どもを産んだ瞬間に無条件で親権という強力な支配道具を手にすることができるからです。
親権には先に出ました財産管理権のほかに、以下のような権利があります。
- 監護教育権
- 居所指定権
- 懲戒権
- 職業許可権
- 代表権
これらが示しているのは、子どもは親が許可した学校にしか通えない(監護教育権)、親が許可指定した場所に住まなければならない(居所指定権)、親はしつけとして子どもを懲らしめることができる(懲戒権)、親の許可がなければ働けない(職業許可権)などです。
これらの権利を子どもの健全な成長のために行使するのが正しい親権の使い方ですが、反面親権があるために以下のような虐待が起きてしまうのです。
- しつけのためと称して殴る(身体的虐待)
- 中学から大学まで通う学校を指定され、塾や受験勉強をさせられる(教育虐待)
- 実家を出て一人暮らしをすることを許さない(心理的、経済的虐待)
- 正当な理由なくアルバイトをすることを許さない(経済的虐待)
親権という強力な権利が親にあるために、児童相談所もなかなか一時保護などの措置をとることができません。また、児童相談所は年齢の低い子どもの保護を優先するため、自分が虐待を受けているとわかってくる思春期以降の子どもの保護になかなか踏み切れないところがあるようです。
全ての親が親になるべくしてなり、子どもの人権を理解して、健全に育てようと思って子どもを産むわけではありません。
中には子どもを育てるにはあまりに未熟な親も多くいます。
問題は、子どもを産んだというそれだけの理由で無条件にこの強力な親権がどの親にも与えられることだと、今さんは話されました。
そして、子どもに親を選ぶ権利がないことも、子どもの人権に反していると。
子どもがもつ権利を、私たちは教える必要がある
日本には児童憲章や子どもの権利条約、そして児童福祉法で、子どもの権利などについて以下のように定めています。
- 子どもは一人の人として尊ばれる
- 子どもは社会の一員として尊ばれる
- 子どもはよい環境の中で育てられる
- 子どもは生きる権利がある
- 子どもは育つ権利がある
- 子どもは守られる権利がある
- 子どもは参加する権利がある
- 社会のあらゆる分野において子どもの意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮されるよう努める
こうした権利を子どもが持っていることを知っている人はどのくらいいるでしょうか。
こうした権利があると知っている子どもはどれくらいいるでしょうか。
欧米諸国では子どもの人権教育は当然のように受けられ、自分にどのような権利があるか、またどのような責任が伴うかを学ぶ機会がありますが、日本はでしょうか。
親ですら知らない。
下手をすれば教師も知らない。
では誰が教えるのでしょうか。
それは、今、このブログを読んでくださっているあなたです。
子どもの権利について勉強してみませんか
講演会では、ではどのように虐待を減らしたらいいのか。
オレンジリボンキャンペーンでは虐待を減らすことはできなかった。
そもそも親権が強すぎる、そしてたった二人の両親にその全権がゆだねられていることを問題として、様々な提言がありました。
国に、自治体に、訴えていくためには、子ども自身が声をあげられるようになること、子ども自身のことを子どもが決められるようになることが必要です。
そのために、その前に、一度「子どもの権利と親の権利」について、親たちが学ばなければならないこともたくさんあります。
子どもに人権があることを伝えるために。知らず知らずのうちに虐待をしてしまわないように。
今回の講演会や、その他講習会で私が知ったことを、皆さんにお伝えする準備を今、進めています。
ぜひお子様連れでご参加ください。
日時:2019年12月21日(土)
場所:名古屋市内(調整中)
参加費:無料
名古屋以外にお住まいの方、今回私が受けた今一生さんの講習会は、
11/30 福岡
12/14 町田
12/15 大阪
の各地でも開催されます。
詳しくは今一生さんのブログをご覧ください。